元不登校、現役大学生の雑記

自分の経験則を誰かの生活に役立てられるのではないかと思い、始めさせていただきました。過去の自分のように暗くて辛い生活で悩んでおられる方々の、一助となれば幸いです。リアルをお伝えできるよう心がけています。

ノモスとピュシス(規約(人為)と自然)の対立

 その指導者,アテナイの知識人たちこそ,ソフィストの影響を過激 化させた張本人であった.「ノモス(習わし・法)」と「ピュシス(自 然)」の対立こそ彼らのキャッチフレーズであった.その一人アンテ ィポンは,次のように正義の自然性を否定する.
正義とは,自分の住む国の決まりを犯さないということである.だ から人は,目撃者のいる所では法を尊重するが,一人だけの時では 自然のそれを尊重すれば,正義をもっともよく自分のために活用で きるだろう.なぜなら,法の上の事柄は後から恣意的に定められた ものだが,自然的な事柄は変更できない必然的なものだからであ る.(断片四四)
 法の起原は自己利益への自然な欲望に溯及される.プラトーンの伯 父クリティアースは,正義の守り手の神々(=宗教)も,悪賢い支配 者が,人間の私利追求を恐怖によって抑えるため発明したのだと主張 した.プラトーンの対話篇に登場するトラシュマコス,さらにカッリ クレースは,正義と法の人為性を指摘するにとどまらず,その論理を 完徹させ,自然本能の欲望とその充足だけを真の価値と見なし,そう した欲望を無際限に追求充足させることこそ,人間本来のあり方に適 った幸福と見なし,美徳をひ弱な虚飾と嗤い,強者の権力を称賛す る.知恵の誉れ高いアテーナイは,真理追求の結果,社会規範の基盤 に達し,深い亀裂をもたらした.それを真に引き受けたのがソークラ テースであった.